審査総評
簡単な物事に、深い意味が隠されていることがあります。
工芸、工作、工夫、そして木工などの「工」という字は、たった三画の簡単な文字ですが、そこには大きな意味が込められています。中国の古い字書は、上下の二本の横線は天と地、縦の線は人を表わしているといいます。しかも直角に交わる姿は定規、つまり正しい規則を示し、人が天と地との間にあって規則正しい仕事をすることを意味し、また人の上に立つ者は、定規のように人々の標準とならねばならないため、官吏を工と呼んだともあります。
天(自然)の摂理(法則)をもって、地上の人々のために物を作ること。私はそう解釈していますが、ただ人が天から受けるものはそれだけでなく、天の心、言い換えれば自然の恩恵をも受けていることを人は忘れてならないと思います。木に親しみ、木を用いてモノを作る。その行為は、人と自然との共生といった言葉を超えて、天・地・人が一体となり得る貴重な瞬間であるとさえ思えます。
今年も、制作中の様々な想いを秘めた数多くの作品が、この丹波年輪の里に集まりました。出品点数こそ例年より少なめでしたが、いずれも高水準の粒よりの作品ばかりで、審査も慎重にならざるをえません。一つの作品を前に、長時間の論議も珍しくありません。入賞候補以外の作品の中にも見るべきものを持ったものがないかと、何回もの見直しも行われました。それぞれの作品の中に込められた皆さんの想いを集めたら、どれだけの量になるでしょう。それに応えるべき審査が望まれるからです。
来年もまた、この丹波年輪の里に、多くの作品が集うことを楽しみにしています。
一般の部審査委員 日野 永一
(兵庫教育大学名誉教授) |