本展の作品の審査にかかわっていつも思うことは、制作者の手や制作姿勢が誠実で、すがすがしいということです。第12回展にもなると制作技術レベルの高い人がふえましたが、何よりもテーマに取組みアイディアを練るプロセスや、切る、彫る、削る、組み立てるなどの加工のすみずみに、ていねいさと誠実さを感じます。それがクラフトの本質なのかも知れませんが、誠実さが美しさをいっそう深めているように思えます。それは現代が喪失した自然の生命に依拠する真心とでも言いましょうか。
いま家庭崩壊や幼児虐待などに象徴されるように、現代社会は誠実な人間関係が問われていますが、私たち日本人が人や生活に対して誠実さを失ったのは60年代に入ってからのことでしょうか。たとえば子供のおもちゃがプラスチックの量産型になるとファッションやコレクションが目的になり、おもちゃ箱は一気にふくれ上がるとともに使い続ける愛着心が薄れ、子ども時代から生活道具に対する誠実な心を失っていきました。
大量生産大量消費で使い捨て生活にすっかり慣れてしまった私たちは、自然破壊や地球の温暖化についても誠実な危機意識が薄れていると言われています。生活に必要なものを工業生産にばかり依存し、自らの手で生活を作りだす生活力を弱めてしまいました。お金を出せばなんでも買える生活を享受し、家事や子育てはもちろんのこと、墓参り、葬儀参列なども代行業に依存するようになり、思いやりや誠実さも商品化できると考えられるようになりました。子どもが「ペットが死んでもまた買うからいい」と言うようにさえなりました。
けれども、この使い捨て生活にくさびを打ち込んだのが、クラフトの誠実な美意識ではなかったでしょうか。削っては触り、組み立てては眺め、木の生い立ちを振り返り、使い勝手を工夫する繰り返しが、お金では買えない文化を生んでいるように思います。
本展のテーマは「遊・戯・木のぬくもり」となっていますが、制作の誠実さに欠ければ遊び心は怠け心に映り、ユーモアは下品なものになるのではないでしょうか。木のぬくもりは素材自身が宿していますが、さらに人間の手のぬくもりで包み込むのが手仕事の誠実さです。ぜひ第13国展にも誠実とユーモアの造形美にチャレンジしてください。