メイン林産指導課の紹介情報誌 「林産だより」 平成18年度木材・木造住宅の基礎知識人にやさしい木材塗料 ~木材塗料展参加企業の紹介など~ >第97号(P2-3) 「木材用塗料」〜種類と特徴〜

第97号(P2-3) 「木材用塗料」〜種類と特徴〜

木材の塗装は、木材の狂う・割れる・腐るなどの性質を補ったり、素材が本来持っている質感を高めたりすることを目的として施される。塗料には様々な分類方法があるが、ここでは一般的な分類方法である主原料成分の違いにより分類し、種類や特徴を紹介する。

原料成分による木材用塗料の分類

分類 塗料名 塗膜主成分
天然樹脂塗料 セラックニス セラック
カシュー樹脂塗料 カシューオイル
油性塗料 オイルフィニッシュ アマニ油、ボイル油、合成樹脂
油性ワニス(スパーワニス) 乾性油、天然樹脂
油性調合ペイント ボイル油、着色顔料
合成樹脂調合ペイント ボイル油、合成樹脂、着色顔料
木材保護着色塗料 乾性油、着色顔料
合成樹脂塗料 ニトロセルロースラッカー
(硝化綿ラッカー、ラッカー)
硝化綿、アルキド樹脂
アクリルラッカー アクリル樹脂、硝化綿
フタル酸樹脂塗料 フタル酸樹脂
アミノアルキド樹脂塗料 アミノ樹脂、アルキド樹脂
不飽和ポリエステル樹脂塗料 不飽和ポリエステル樹脂
2液型ポリウレタン樹脂塗料 ポリウレタン樹脂
湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料 ポリウレタン樹脂
油変性ポリウレタン樹脂塗料 ポリウレタン樹脂
UV硬化型塗料 ウレタンアクリート
不飽和ポリエステル樹脂

天然樹脂塗料

セラックニス

ラックカイガラ虫という昆虫が分泌した樹脂状物質を精製してアルコール溶液に溶かしたもの。 刷毛塗り作業性が良く、速乾タイプである。 塗膜は硬いが耐水性が悪く、耐熱性、耐アルカリ性も弱い。 オイルステインの色押さえ等に利用される。

漆の木の樹液を精製して得られる乳白色のW/O型エマルション※1で、成分はウルシオール、水、水溶性多糖類、糖タンパク、乾燥に寄与する微量の酵素「ラッカーゼ」からなる。 漆は滴湿適温下で乾燥する「湿気硬化型」の塗料である。 ラッカーゼは空気中の水分から酸素を取込み、主成分「ウルシオール」を酸化重合させる。 塗膜は光沢が良く、紫外線には弱い。 塗料は高価で、主に工芸用。

カシュー樹脂塗料

カシュー樹脂塗料は、カシューナットシェル液(CNSL:Cashew Nut Shell Liquid)を原料とした酸化重合型塗料の総称。 食用のカシューナットはナットの核(kernel)の部分で、この核を包む外皮を搾油、精製することで、CNSLを得られる。 主成分「カルダノール」は漆の主成分と化学構造が似ており、乾燥塗膜は漆調に仕上がるが、漆とは別物で乾燥機構も違う。  塗膜は、肉もち、光沢が良く、耐水性に優れ、紫外線に弱い。 工芸品、家具等に用いられる。

油性塗料

オイルフィニッシュ

アマニ油を主体にボイル油、合成樹脂、乾燥促進剤、溶剤から構成され、チークオイルや油性の自然塗料などがある。 オイルフィニッシュは塗料を木材の表面から内部に浸透させて、塗膜を表面に作らないか、作っても極薄い膜で、他の塗装と比べ木質感を大切にした深みと艶のある仕上げとなる。 家具、建築塗装に用いられる。

油性ワニス※2

乾性油と天然樹脂を加熱重合し、乾燥剤を加え溶剤に溶解したもので、酸化重合で乾燥する。 油の量の多少により長油性、中油性、短油性に分けられる。 耐水・耐候性があり内外装に用いるが、乾燥時間が長い。

油性調合ペイント(OP)

ボイル油※3に着色顔料を練り込んだもので、作業性改善のため希釈剤を混合する。 昔から「ペンキ塗り」と称して親しまれており、肉もち、耐候性が良く塗膜に柔軟性があるため、主に外装に用いられる。

合成樹脂調合ペイント(SOP)

乾燥を速めるため、OPの原料「ボイル油」の代わりに合成樹脂(長油性フタル酸樹脂)を使用したもので、耐水・耐候性があり、屋内・外塗装に用いられる。

木材保護着色塗料

SOP等の「造膜型塗料」は木材の吸・放湿作用を妨げ、木目を消す欠点があったが、これを解消する目的で開発された「含浸型」「半造膜型」の外装用塗料。 原料は、アマニ油などの乾性油やアルキド樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂などの展色剤、防腐剤、防カビ剤、撥水剤、顔料、溶剤。

合成樹脂塗料

ニトロセルロースラッカー

ニトロセルロース(NC:Nitro Cellulose)を主成分とし、樹脂および可塑剤と溶剤からなる。 NCは木材パルプ等のセルロースを硫酸と硝酸の混液で処理した「セルロース誘導体」の一種で、エステル化度の高いものは火薬の原料に使われ、燃え易い性質がある。 この性質は吹き付け塗装時の飛散塗料粉や塗膜研磨粉、乾燥塗膜にも引き継がれる。 乾燥が速いため、高湿度下では白化(ブラッシング、かぶり)が発生することがある。 梅雨時などは、白化を防ぐためリターダーシンナーを加えてシンナーの蒸発速度を遅くする。

アクリルラッカー

アクリル樹脂、NC、可塑剤、および溶剤からなる。 性状はNCラッカーに良く似るが、NCラッカーに比べ黄変性が少なく、白木仕上げ塗装に適す。

フタル酸樹脂塗料(FC)

主原料はグリセリン、無水フタル酸、乾性油・半乾性油である。 グリセリン(-OH基)と無水フタル酸(多塩基酸(-COOH))とが反応(エステル化)して得られる樹脂をアルキド樹脂といい、フタル酸樹脂塗料は、乾性油・半乾性油でアルキド樹脂を変性したもの。 塗料には主原料のほか、乾燥を促進させるため、コバルト、マンガン、鉛などの乾燥剤を混合しており、乾燥が速く塗膜硬度もある。 クリアタイプは内装、顔料を練りこんだエナメルは外装に用いる。

アミノアルキド樹脂塗料

アミノ樹脂とアルキド樹脂を混合したもので、木材用には、酸で硬化させる「酸硬化型アミノアルキド樹脂塗料」が使われる。 塗膜が硬く、対擦り傷性に優れ、フローリングの塗装に用いる。

不飽和ポリエステル樹脂塗料

塗装時に、反応促進剤(コバルト)と硬化剤を混合し使用する。 一度に厚膜が得られ、硬度も高いことからテーブルの天板や家具に使われているが、塗装が難しいために主に工場で用いられる。

2液型ポリウレタン樹脂塗料(UC)

主剤(A剤)と硬化剤(B剤)とが別の容器に保存され、これらを使用前に混合すると化学反応を起こして硬化する。 A剤にはOH基を有する各種ポリオール、B剤にはイソシアネート基(-NCO)を有するポリイソシアネートが用いられる。 A・B剤とも種類が多く、これらの組合せにより得られるUCの種類は多種にのぼる。 塗膜性質は、木工塗料中で最も性能バランスの優れた塗料で、一般にウレタン塗料と言えばこのタイプを指す。

湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料

空気中の湿気を吸収して硬化する1液型塗料で、塗膜が硬く、主に床用に使う内装用塗料。 原料はポリアルコール、イソシアネートで、塗料中に遊離のイソシアネートが存在し、毒性がある。

油変性ポリウレタン樹脂塗料

主成分は乾性油またはアルキド樹脂とイソシアネートを反応させて得た樹脂と乾性油からなる。 油性塗料と同様、空気中の酸素を吸収し、酸化重合する。 塗料中に遊離のイソシアネートを含んでおらず毒性がなく内装・外装用に用いられる。

紫外線(UV)硬化型塗料

紫外線を照射することによりラジカル重合を開始し、短時間(秒単位)で高硬度の塗膜を形成する「超速乾型塗料」である。 UV硬化型塗料の組成は、光重合性プレポリマー、光重合性モノマー、光開始剤、光開始助剤。 生産ラインをシステム化した工場での塗装が前提とされており、家具、建材を中心に飛躍的な発展を遂げている。

その他の分類

水系塗料

現在主流の木材用塗料のうち、不飽和ポリエステル樹脂、漆、柿渋を除く塗料は多量の溶剤が使用されている。 環境保全の観点から、水系塗料の開発等、使用溶剤を少なくする技術が考えられている。 水系塗料には、水溶性樹脂塗料(水性塗料)、エマルション塗料、コロイダルディスパーション塗料に分類され、原料に少量の有機溶剤が含まれるものもあるが、臭いが少なく環境に優しい塗料である。

自然塗料

定義は曖昧であるが、合成樹脂、有機溶剤、有機顔料などの化学物質を殆ど含まない塗料。 オイルフィニッシュと同様、表層部に浸透させて仕上げる。 漆・柿渋も自然塗料に含まれる。

柿渋

青い渋柿の果汁を発酵させた液で、主成分は「カキタンニン」。 フェノール性のOH基を有する水以外の添加物を使用しない自然系塗料で、漆の下地、家具、建築塗装に用いる。 柿渋液の固形分は4〜9%で他の塗料に比べかなり低く、ある程度の膜厚を得るには、多くの塗布回数が必要である。

語句説明

※1エマルション(emulsion、乳濁液)

乳化重合体塗料で、水中に樹脂が分散しているものを水中油滴(O/W)型エマルション、樹脂中に水が分散しているものを油中水滴(W/O)型エマルションという。

※2ニス(ワニス、varnish)

ワニスの省略語。ワニスは和ニスではなくvarnishから転じた。

※3ボイル油

生の乾性油や半乾性油は、少量の酸化を妨害する物質があるため初期の乾燥速度が非常に遅く、一定期間(誘導期間)を経てから比較的速やかに乾燥する。 加熱した乾性・半乾性油に空気を吹き込み、乾燥剤を添加すると誘導期間がなくなり、乾燥性が良くなる。 これを「ボデー化」といい、得られたオイルをボイル油という。